地方創生政策とか

かの大前研一氏いわく、成長戦略とやらも万策尽きて、
自民党の票田である地方を固めにいっただけの政策とボロクソに言われていた。

自分も基本的には地方交付税や、この手のバラマキ政策パッケージは、
いい加減にやめるべきだと考えているけども、
単純に東京とそれ以外という二元論で考えると、
無駄に東京と他の地域の不毛な論争を呼び起こすだけで益がないと思う。

地方と言っても一様ではないことをまず認識する必要がある。例えば、

A、3大都市圏以外の「政令指定都市や県庁所在地及び中核市
B、Aと一体となって都市圏を形成している市町村
C、車で1時間走ってもAまでたどり着かないような孤立した市町村

大まかにこんな区分けができるかもしれない。

この狭い国土に1億3千万弱の人口が住んでる以上、
AやBを発展させていくのは重要であると思うが、
バラマキの代表格であるようなインフラ整備に関して言えば、
新幹線や高速道路・空港など、既にA及びBをほとんど網羅している。

近年になって行われてるその手の公共事業、特に高速道路などは、
ほとんど人が住んでいないようなCの地域にまで及んでおり、
仮にコストを抑えて2車線で作ったとしても費用対効果が1にも及ばない路線は、
小泉政権以後の公共事業削減の流れの中で事業化が見送られてきたが、
震災後になって「国土強靱化・防災」などの名目で、
コストを度外視して次々と高規格道路が建設されている。

その最たるものが1兆4千億円を投じて建設中の三陸自動車道であろう。
(さらに1兆円を掛けてこの地域の防潮堤整備も行うようだ)

大前氏によるとこれらの地域は人が住んでいないので、用地も簡単に取得でき、
金をバラ撒くための公共事業をやるにはもってこいなのだとか。

経済成長の手段のためのインフラ整備が、
今や土建族の利権確保という目的にすり替わっている。
インフラを整備すれば経済効果があるところはほとんどやり尽くしたので、
もう地方に金をバラ撒き、インフラを整備することによっては経済成長はしない。

2050年辺りを想像すればCに属する市町村は、
既に有名になっている観光地(富良野草津など)があるだとか、
人・モノ・カネが継続的に入ってくるような、
高い競争力のあるブランドを持っていなければ生き残りは難しいだろう。

地方交付税というのは麻薬のようなシステムである。

自助努力で、工場から果ては原発まで産業を誘致してきたような自治体には、
「潤っているからお金をあげない」。
何もしなかった自治体には「貧乏だからお金をあげる」。

このように努力すればバカを見るようなシステムで地方が衰退しないわけがない。
厳しいことを言えば、中央からのバラ撒きをアテにして暮らしている、
生活保護者の集まりのような魅力皆無の地方自治体から、
若い人が都市に出て行くのは当たり前だ。

そんなところに金をばらまいても、現役や将来世代の負担が増えるだけで、
年に2回の里帰りが便利になる以上の効果はないだろう。

また、Cだけではなく、AやBの自治体にも、いかに中央から金を貰うか、
という政治思想が染み付いてる自治体も少なくないだろう。


安倍政権がやるべきは、地方にカネを落とすのをやめ、財政規律を保ち、
その代わりに地方自治の権限と財源を与え、
地方に大都市圏や世界から人・モノ・カネを呼び込める、
創意工夫と生き残り競争を促すことなのであるが、
選挙に勝てるバラ撒きという方程式は自民党にとっても麻薬なのであろう。

地方交付税を段階的に廃止し、その予算は増え続ける社会保障費に回し、
Cの地方には無駄なインフラ投資をやめ、
高齢者の生活支援効率が高いコンパクトタウン化を進め、
町おこしではなく、自治体消滅・町じまいの準備をさせることだと思う。
既に生活保護自治体となった地方自治体に必要なのはリストラクチャリングである。

自治体が消滅するのは良くないことだという感情論で、
延命治療にもならない金を落とし続け、
例えば、政府が国債をデフォルトするところまで追い込まれれば、
大都市まで田舎に足を引きづられて共倒れである。


AやBの地方都市は、それなりの人口と経済のボリュームがあるため、
2050年になって無人地帯になっていることは考えにくい。

しかし、中央から財源と権限をひっぺがし、
それぞれの地方の地理的条件や特長を活かした、
21世紀ならではのニーズを満たすようなユニークな政策で、
人(特に若者や子育て世代・移民も)・モノ・カネを継続的に呼び込むことが、
2050年以降も生き残る地方を作る条件になると思う。


地方でも置かれている状況が違いすぎるため、政策の方向性は異なるが、
発展を目指すにしろ、消滅への道を歩むにしろ、
国のカネをアテにしない、自助努力を促さないと、
日本国民みんなで一緒に沈没することは確かだろう。